ちょうどこの頃の日本は、戦争もなく平和な時代が続いて大いに発展しました。
江戸の人口は100万人を超え、パリやロンドンをもしのぐ世界有数の大都市になります。
上水道も完備され、教育水準も識字率も高く、子供たちが寺子屋で学ぶための教材もそろっていました。
歌舞伎や浮世絵など、町人たちの文化が急速に発展した時期です。
人々は長生きを求め、江戸では健康ブームが広がりました。
しかし、庶民層が気軽に受診できる病院や健康保険制度などはありませんから、
長生きしたければ自分の健康は自分で守らなければなりません。
そこで、いわゆる健康本が流行り、病気の養生法や疫病(感染症)予防、薬の知識や広告などの引き札も数多く出まわりました。
“体の中は一体どうなっているのだろう?”
“食べ過ぎると胃がもたれるのはなぜ?”
といった消化吸収のメカニズムを知りたいという願望も強く、『解体新書』の出版も話題になって、今回ご紹介したような引き札も話題を呼んだのでしょう。
現代の私たちのほうが、医学・医療は江戸時代よりはるかに進歩しているのに、健康管理は医者任せ、病院任せにしていて、案外、自分の体のことを知らないかもしれません。
最後に食道と気管支の部分に描かれている内容をご紹介します。

食道は「飲食道」、気管支は「息通う道」と記されています。
肺では大きな団扇(うちわ)であおぎながら「団扇の骨も折れるが、又、体の骨も折れるようだ。
ちっと休もうじゃねえか」「団扇乱脈だ、なぞと言われちゃ悪いから、何でも骨折ってから休みやしょう」などと言い合う人たちが。
繰り返しになりますが、あらためて私たちもカロリー高め、糖質多めの食生活を反省し、
170年前のご先祖さまから“暴飲暴食や偏った食生活は体によくない”という教訓を学び、自分自身のセルフメディケーションを意識したいものです。