寒さとともに空気が乾燥してくると、皮膚がカサカサになり、喉が痛くなるなど、冬ならではのトラブルに悩まされますね。
これらを防ぐためには、お肌の保湿ケアとともに、室内が乾燥しないための対策が必要です。
すでに、衣替えとともに布団も厚手の羽毛に替え、しまい込んでいた加湿器を出してきてフル稼働させているという人も多いと思います。
風邪の予防のためにも、室内を加湿することは大事なのですが、加湿器が原因で気管支炎や肺炎になることもあるので、注意が必要です。
加湿器には、卓上型のコンパクトなものから床置きの大型のタイプ、おしゃれなデザインのものなど、いろいろなタイプがあります。加湿効果や価格、電気代、メンテナンスのしやすさ、安全性、デザイン性などを比較して選ぶことになるのですが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
家庭用に市販されている加湿器は、次の4タイプに分類されます。
1. 加熱式(スチーム式)
タンクの水をヒーターで加熱して沸かし、蒸気(湯気)を発生させる。加熱するため、カビや雑菌が繁殖しにくい。他のタイプに比べて、電気代がかかる。室温を上げる効果もあるが、湯気によるヤケドに注意が必要。
2. 気化式
不織布などに水を含ませ、蒸散させることによって加湿する。電気代は安い(かからないタイプも)が、加湿効果は高くない。メンテナンスが行き届かないとカビの温床になりやすい。
3. 超音波式
水に超音波の振動を伝えてミスト(霧)を発生させることで加湿する。加熱しないため、タンクの内部にカビや雑菌が繁殖しやすく、空気中に放出される危険性が高い。比較的安価でデザイン性の高いものが多く、インテリアのひとつとして魅力的だが、メンテナンスしにくい形のものもある。
4. ハイブリッド式
スチーム式と気化式を合わせたようなタイプ。水に温風を送って加熱するので、雑菌の繁殖・放出はしにくい。素早く加湿されるうえ、消費電力も抑えめだが、本体価格は高め。
主に2や3のタイプでは、内部に発生したカビなどがタンクの水と一緒に霧状になって空気中にばら撒かれることが多いのです。それを長期間吸い込むことで肺が炎症を起こすと、発熱やしつこく続く咳、息苦しさなど、風邪のような症状に悩まされることがあります。
夏場には、エアコンの内部に発生したカビによって同様に肺炎を起こすケースもあり、「夏型過敏性肺炎」と呼ばれています。
加湿器やエアコンのカビが原因で起きる肺炎は、インフルエンザや風邪による肺炎とは異なり、「過敏性肺炎」と呼ばれるアレルギー性の肺炎です。
長引く咳や微熱など、症状は風邪に似ていますが、“同じ症状が何日も続く”ことが特徴です。
一般的に、いわゆる風邪(上気道炎)であれば、同じ症状が3日間以上続くようなことはまれであり、症状が悪化するか、またはよくなっていくものです。
ところが、過敏性肺炎の場合はアレルギー反応による症状なので、鼻水や咳、微熱などがだらだらと続くのです。
このような症状が2週間以上続く、毎年繰り返すなどの場合は、ぜひ呼吸器内科を受診してください。
過敏性肺炎が慢性化すると、肺の組織が硬くなってしまい(線維化)、呼吸機能が大きく低下してしまうこともあります。
コロナ禍以降、在宅時間が長くなったこともあり、エアコンや加湿器を稼働させる時間も長くなったせいか、それらが原因となる過敏性肺炎が増えていると指摘する医師もいます。体調に心当たりのある人はいませんか?
誰もが発症するわけではありませんが、アレルギー体質の人や鼻や喉が敏感な人は、加湿器を選ぶときに配慮が必要でしょう。また、いずれのタイプでも、メンテナンス(水タンクの掃除)は重要です。また、タンクに入れる水は浄水器を通した水ではなく、必ず水道水をそのまま使用すること。
水道水には消毒のための残留塩素が含まれているため、雑菌の繁殖を防いでくれるからです。
実は、加湿器以外にも、この時期には過敏性肺炎の原因になるものがいろいろあるのです。
しかも、ダウンジャケットや羽毛布団のダニ、家具の裏側に隠れたカビ、24時間風呂、鳥などのペットといった、私たちの身近にあるものばかりです。
羽毛には、鳥の皮膚からはがれ落ちたブルームと呼ばれるタンパク質が付着しています。このブルームはスギ花粉の約10分の1という極小サイズなので、鼻や口から吸い込むと容易に気管支や肺の奥まで入り込んでしまうのです。それが長期にわたると、肺に慢性的な炎症が起こります。
秋から冬にかけて急に寒くなる時期に、「鼻水が止まらなくなる」「しつこい咳が長引く」といった症状に悩まされていて、「そういえば、去年もそうだったなぁ」という人は、アレルギー性のものである可能性大。身のまわりの環境は原因として見落としがちなので、案外、気づきにくいものです。
自分でできる対策としては、まずは過敏性肺炎の原因になるもの(抗原)を遠ざけることが重要です。
加湿器の選び方はもちろん、生活環境を見直すことなど、できることを実践しましょう。
たとえば、羽毛で症状が起きる人はまめに掃除をする、布団の素材を変える、冬の満員電車を避けるなど、対策はいろいろありそうです。
さらに、肺や気管支の機能を健康に保つために、毎日の口腔ケアや水泳、肺まわりの上半身のストレッチなどの運動を心がけましょう。もちろん、完全禁煙も効果的です。
この記事について
・加湿器は選び方とメンテナンスに気をつけて
・長引く咳や微熱。風邪ではないのかも!?
・身近にある「過敏性肺炎」の原因に気をつけて!
参考文献:
生島壮一郎『肺炎に殺されない!』(すばる舎)
構成/文 吉本 直子
医療・健康ライター。一般向けの健康書籍や雑誌記事の執筆をはじめ、医師向けの学術誌制作にも携わる。得意なジャンルは皮膚科学全般および美容皮膚科学、婦人科学、漢方医学、栄養学など。ライフワークは医学学会に参加することと、歌舞伎と浮世絵から江戸時代の人たちのセルフメディケーションを学ぶこと。